tadanori yokoo

日本のアートや芸術論に「思想的裏づけがない」と嘆いたのは、60年代の矢内原伊作だった。ところが、わが国に生まれ育ったアメリカ人のリンダ・ホーランドは、感覚にのみ流されていると思われがちなこの文化遺産に注目する。これらの絵画・写真・映像類を使えば、あいまいにみえた戦後日本も案外すっきりと捉え直せるのではないか。たとえば竜巻のごとく、すべてをなぎ倒していったあのANPO騒動なんかも。
映画でとり上げられたアーティストは、戦前をよく知る阿部合成、井上長三郎、浜田知明、濱谷浩、林忠彦、丸木位里・俊、森熊猛、山下菊二、ポール・ロブソン。戦中派の朝倉摂、池田龍雄、嬉野京子、桂川寛、東松照明、富沢幸男、細江英公、中村宏、横尾忠則、半藤一利、石井茂雄、市村司、長野重一。戦争を知らない加藤登紀子、石内都、串田和美、石川真生、会田誠、佐喜眞加代子、ティム・ワイナー、長濱治。そして現代バリバリの風間サチ子、山城千佳子などだ。
それにしても多くの証言が半世紀という国際政治の流れに翻弄されるなか、淡々と事実のみを捉えた池田龍雄、沖縄というANPOの現場からものをみる石川真生、そしてあくまで自身の感覚に基盤におく横尾忠則の姿勢が、ことのほか爽やかだった。

横尾忠則:メール拝見しました。言ったこと、したこと、すっかり忘れていました。ハッと目が覚めた感じです。ANPOまだ観ていませんが…。

 


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